携帯電話網に於ける通話は 3G による通話と VoLTE による通話に大別されます。
VoLTE が主流になりつつある現在、従来の 3G 通話との互換性も維持しなくてはなりません。
また、今後 5G になってくると VoNR(VoLTE の 5G 版)も対応する必要がありますが、 3G/4G または 4G/5G のいずれかになると思われ、3世代に渡る互換性ではないと思われます。
【 3G での通話・CS(Circuit Switched Network:交換網)方式 】
CS 接続は STM-POI を通じて行われます。
コアネットワークにある MGW を経由して通話先の事業者へ SS7(共通線信号 No.7)を通じて IP に似た Point Code で接続されます。
SS7 は宛先電話番号が管理されている交換機を特定し、そこに向けてトランクを張ります。
交換機同士は SS7 にて接続制御され、これをトランクと称しています。
一旦トランクが確立されると、エンドツーエンドの電話線を通じて通話ができる仕組みです。
これは IP 網に於ける DNS と IP 通信に似ていて、前者が「トランクを張る相手を特定する」ことに相当し、後者が「通話」そのものという感じです。
交換網の方が古いわけですから、そもそも Internet の 原型である ARPAnet が SS7 ライクな仕組みを作ったということでしょう。
このとき 番号が MNP されている場合は現在の番号管理事業者に再接続されます。
接続によりトランクが張られ、AMR-NB(Adaptive Multi-Rate Narrow Band)
コーデックで通話できるようになります。
【 4G での通話・VoLTE 方式 】
一方 VoLTE は現在各キャリア間で相互接続の仕組みが確立されており、VoLTE 同士は IP ベースの接続で、SIP プロトコルが使われます。
発呼側が VoLTE の場合は ENUM によって接続先を判断し、接続先の IBCF に対して SIP INVITE(発呼)します。
相手端末側も VoLTE の場合はそのまま VoLTE 接続されますが、端末側が 非VoLTE の場合は、CS フォールバック によって 3G での接続に変更されます。
VoLTE 通話時は AMR-WB または AMR-WB (EVS) による広帯域・高品質通話になりますが、CS フォールバック された場合は VoLTE の広帯域・高品質通話ではなく AMR-NB での通話品質になります。
固定電話網など STM-POI を通じて発呼されてきた場合、MGW にてメディア変換して
CS 接続または VoLTE 接続になります。
端末が 非VoLTE の場合は CS フォールバック による 3Gでの接続となり、AMR-NB での通話品質です。
端末が VoLTE 対応されていれば VoLTE 接続になりますが、通話品質は STM 回線品質に依存のため、AMR-NB 品質です。
VoLTE のプロトコル・スタックは次のようになっています。
図の中で eNodeB の Bearer 部分は「携帯電話網・4G」そのものです。
今後は STM-POI から IP-POI に移行されつつありますので、固定電話網を含めて IP 接続に一本化されていきます。
純粋に交換機インタフェースの「黒電話用」にはモデムでラスト・ワンマイルが対応される見込みです。
実際のコアネットワークでの処理はハンドオーバーや、ローミングなど、もっと複雑な処理がなされていますが、概念的にはここで記載した内容で大まかな理解の一助にしていただきたいと思います。
以上の仕組みを理解いただくと「楽天 UN-LIMIT」の姿が見えてきます。