2020-10-22

移動体通信網について:1G 〜5G、そして LTE / NR



ブログでの記述はなるべくわかり易くを心がけているつもりですが、一定の基礎的知識を必要とした書き方になっているかも知れません。

 

 

大変申し訳ないことです。



という訳で、遅ればせながら移動体通信網における、4G とか 5G とかについて簡単に触れてみたいと思います。




まず、「G」とは "Generation" の頭文字を表したもので、「世代」のことです。


つまり一番最初の世代である 第1世代から現在実現されている 第5世代までが提供されてきています。

 

 

⦿ 1G(第1世代):アナログ方式の無線電話

           一部企業の役員社用車やハイヤーなどに使われました

 

⦿ 2G(第2世代):デジタル方式・1990年代に商用化されメールが可能になりました

 

⦿ 3G(第3世代):2000年代に商用化され、現在もまだ使われています

           W-CDMA(Wideband Code Division Multiple Access)や

           cdma2000 などのことです


⦿ LTE(4G前身):Long Term Revolution の略で4Gへのつなぎの方式でした

           後に LTE = 4G と国際電気通信連合が認定して同じ扱いになりました

           最大速度は 100 Mbps


⦿ 4G(第4世代):正確には 4G = LTE advanced といい、LTE 進化版です

           最大速度は 1288 Mbps 以上になっています

           LTE 上で音声通話を実現したものが VoLTE です

 

⦿ 5G(第5世代):4G・LTE に対して NR(New Radio)という言い方をします

           超低遅延・超高速(LTE の 100 倍の速度)・多元同時接続が特長

           音声通話は VoNR といいますが、基本的には VoLTE と同等です




現在は、3G と 4G が混在している状態が主流です。


これはデータ通信は 4G で行い、通話は 3G で行うというものです。


通話は CS フォールバック(Circuit Switch:交換機のこと)といって、交換機インタフェースで行うやり方です。

 

キャリア間や、NTT 東西などの固定電話網とは POI(Point Of Interface)という接続装置を介して交換機インタフェースで行われます。

 

 

 

ちなみに、NTT 東西は「黒電話(国内・距離別通話料金型)」を除き、ひかり電話はすでに IP 電話です。

 

 

また、NTT 東西のバックボーンは IP 網に置き換わっており、最後の交換機も 2015 年に廃止されましたから、黒電話用を含む交換機インタフェースだけは残っているはずです。

 

今後、黒電話はモデムを介した電話機接続に変えられる予定です。

 

そのときには「国内・距離別通話料金制度」はなくなると思われます。


 

 

2015 年以前のデジタル交換網は、ポイントコードという IP アドレスに似たアドレス体系を持っていて、DNS に相当する制御装置(SCP/STP)で相手交換機を特定し呼接続します。




 

「呼接続」とは、電話の発信と着信が確立して通話用の「呼」が接続状態になったことをいいます。

 

実際の音声は、呼接続された交換機同士で音声経路であるトランクという経路を開き、そこに音声を流す仕組みです。

 

 

音声はトランク経路上をアナログ信号で流れます。



現在、バックボーンは IP で、光ファイバー接続に変わっていますから、昔のような局から メタル2線式アナログ回線は通っていないと思います。


当マンションでも「黒電話住戸」「ひかり電話住戸」とも、IDF 内で光ファイバーからメタル2線式に変換されています。



戸建住戸で「黒電話」の場合は、局からの光ファイバーを電柱電話変換装置でメタル2線式に変換していると思います。



IP は交換機よりも新しいので、インターネット・プロトコルを考えた ARPA Net がポイントコード体系を真似たのではないかと推察しています。

 


IP 電話では SIP を使って呼接続します。


実際の通話は rtp(Real-time Transport protocol)というパケット上に、アナログ音声からデジタルに変換して圧縮符号化して乗せて送信します。


受け取った側は圧縮された rtp パケットから解凍復号化を行いアナログに戻してイアホンやスピーカーに音声を通します。



このときの圧縮符号化・解凍復号化の処理が「コーデック処理」といわれるものです。

 

2G 時代は GSM(半分の帯域にしたハーフ信号でした)というコーデックが使われていました。

 

3G で フルGSM になりました。

 

ひかり電話は G.711μ-law というコーデックが使われています。


IP 電話も多くは G.711μ-law が使われているのはこのためです。

 

携帯電話網の GSM とは POI を通じて相互に変換します。




4G では、3G の交換機インタフェースに対して、VoLTE(Voice over LTE)というデータ通信網を使って通話を行うやり方が考え出されました。

 

 

VoLTE は IP 電話の一種です。

 

 

優先制御・帯域保証などを行って従来の交換機方式電話や IP 電話に比して低遅延・高品質な通話を実現しています。

 

 

 

VoLTE の場合は CS フォールバックは必要ありませんので、LTE を使ったデータ通信網で IP による通話が行われます。

 

 

 

VoLTE 通話は、従来の IP 電話と同じ SIP(Session Initiate Protocol)という仕組みで行います。

 

従来からある IP 電話と違い、QoS(Quality of Service)制御することで、移動体通信網の無線区間を含む IP 網で、音声を優先的して通し、低遅延・高品質を保つようになっています。

 

 

VoLTE はまた、キャリア間は IP 接続で通話回線を確保します。

 

 

固定電話や、従来からの IP 電話とは POI を介した交換機インタフェースで行われますが、移動体通信網内はあくまで IP 電話として動作します。

 

従来の IP 電話とは IP 接続すればいいのですが、いまの IP 電話は POI 経由の通信網が使われていますので、わざわざ 交換機インタフェースになっています。

 

 

さて、最近なにかとかまびすしい 楽天モバイル・UN-LIMIT は「Rakuten Link」というアプリを使った通話・sms です。

 

 

「Rakuten Link」は、RCS(Rich Communication Services)という IP を使ったマルチメディア通信の仕組みです。

 

 

この中には WiFi Calling という仕組みが含まれていますので、WiFi のみでも携帯電話番号を使った通話が可能です。

 

 

 

RCS もまた通話は IP 電話の一種ですから、SIP を使って通話を実現しています。

 

 

従来からある IP 電話は一部を除いて国内では 050 が割り当てられています。

 

これに対して「Rakuten Link」は 090/080/070 などの携帯電話番号で IP 電話機構を使った通話が可能な仕組み、と理解すればいいかと思います。



推定ですが、UN-LIMIT 網内では VoLTE のような優先制御がされていると思われますが、他キャリアとの間は優先制御されていないと考えます。



したがって品質的には VoLTE > Rakuten Link > IP 電話 ではないでしょうか。

 

 

という訳で「3G(交換機インタフェースの通話) + 4G(データ通信)」はなくなっていく方向です。



今後は 4G のみの「通話(VoLTE)+ データ通信」が主流になりますが、移動体通信網自体は3G が共存しています。



5Gでは「通話(VoNR)+ データ通信」になり、3G との共存はなくなる予定です。

 

 

 

 





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