楽天 UN-LIMIT 加入者への電話を事例に、携帯電話料金がどのように請求されるかを示します。
楽天 UN-LIMIT は携帯電話からの発信の場合「楽天Link」と「標準電話アプリ(VoLTE)」のどちらかに着信しますが、どのケースがそれぞれどちらのアプリに着信するかも示します。
1.3キャリア契約者(ドコモ/au/SB)が 楽天 UN-LIMIT へ電話の場合
通話料はキャリアの収入になります。
カケホーダイなどのプラン加入者の場合は、発信者への通話料請求はありませんが、接続料支払いは発生します。
この場合はキャリア間の接続は IBCF(Inter-connection Border Control Function)を介した IP 接続ですから、楽天 Link に着信します。
逆のルート(発信者が 楽天 Link で着信者が他キャリアの携帯電話)は、発信者・着信者ともに通話料請求はありませんが、相手キャリアへの接続料支払いは発生します。
2.MVNO 加入者が 楽天 UN-LIMIT へ電話の場合
【 携帯電話会社A の MVNO】
(Prefix 電話ではなく、携帯電話番号そのままで発信の場合)
発信者が Prefix 電話を利用しない場合は 20円/30秒 の通話料が請求されます。
この場合、MVNO は携帯電話会社A に対して回線卸料金を支払います。
差額の 6円/30秒 が NVMO の収入になります。
この回線卸料金は長らく 14円/30秒 で据え置かれていて、総務省はもっと安くせよ、といっていますが、キャリア側は拒否しています。
いずれ荒療治されて卸料金は下がると思われます。
日本通信とドコモ間のこの卸料に対する紛争が一つの目安になるでしょう。
この場合はキャリア間の接続は 1項と同様に IBCF を介した IP 接続ですから、楽天 Link に着信します。
3.MVNO 加入者が Prefix 電話で 楽天 UN-LIMIT へ電話の場合
【 携帯電話会社A の MVNO】
(MVNO が自前で Prefix 電話設備を持っている場合)
この場合は携帯電話会社からの回線卸料金請求はありません。
Prefix 電話設備を MVNO が自前で用意した場合は卸料金は発生せず、接続料支払いだけが発生します。
発信者への請求が10円/30秒でも MVNO は 7〜5.2円/30秒 が収入になります。
Prefix 電話の場合は POI(Point Of Interface)経由での接続ですから、楽天Link では着信できず、標準電話アプリ側(VoLTE)に切り替えて着信します。
この切り替えに 約10秒間、発信者側は無音になり、その後で呼び出し音が鳴ります。
呼び出し音が鳴り始めると同時に着信側には着信音が鳴り始めます。
4.MVNO 加入者が Prefix 電話で 楽天 UN-LIMIT へ電話の場合
【 携帯電話会社A の MVNO / Prefix 電話事業者は MVNO とは別】
(発信者が MVNO とは別の Prefix 電話事業者を利用の場合)
3 項との違いは、 発信者が MVNO とは異なる Prefix 電話事業者と契約して、これを使って通話した場合です。
この場合は契約している Prefix 電話事業者から通話料請求されます。
Prefix 電話事業者は、接続料を支払います。
発信者への請求が10円/30秒でも Prefix 電話事業者 は 7〜5.2円/30秒 が収入になります。
MVNO には通話料収入はありません。
たとえば、「楽天でんわ」は他の MVNO 利用者でも Prefix 電話契約 をできるようにしています。
この場合も 3項と同様、POI 経由での接続ですから、楽天Link では着信できず、標準電話アプリ側(VoLTE)に切り替えて着信します。
この切り替え時の、発信者側の無音は 3項と同様です。
2 件のコメント:
バイク野郎さん、こんばんは。
このところの、携帯電話に関する非常に丁寧な解説、非常に参考になります。
ありがとうございます。
楽天MVNOのiPhone6Sから、楽天でんわを使ってUnLimitにかけたとき、まさに書かれているような ”無音状態” に陥ります。コレが理由だったのですね。気の短い人であれば、繋がらないと思って早々に電話を切ってしまいそうだと感じていました。
> この回線卸料金は長らく 14円/30秒 で据え置かれていて、
> 総務省はもっと安くせよ、といっていますが、キャリア側は拒否しています。
三木谷氏がMVNOはキャリアの奴隷だというのはまさにこの部分ですね。
また話を脱線させてしまって申し訳ないのですが、例えば楽天は、楽天市場を始めとして、ワンタイムパスワードのような2要素認証をいつまでも採り入れません。GAFAはもちろん、PayPAl、Yahoo!Japanでもかなり以前から対応しています。不思議でなりません。
Paypayと楽天Payを比べても、楽天のものは使い勝手が悪く、以前からこれではシェアは伸びないと思っていました。ラクマとか楽天bookとか、あらゆる分野で、楽天のものが一番ということがないのです。
多分、彼にとっては事業の展開スピードこそが最重要なのであって、とことんまで考えて良いものを作ろうという思想がないのだと思います。下手なプログラムは、最初の設計が悪く、後から野放図に拡張されて、メンテするのが大変です。そういうものでも、とりあえず短時間ででワーッと作ってしまう力だけがすごいという印象です。
だから、私はむしろ、その速攻力で業界に風穴を開けてくれることだけを期待しています。
何となくですが、これまでの経緯からも、楽天から ”質の高いもの” が出てくるという期待が持てないのです。
非常に残念に思っています。
楽天は、楽天モバイルだけのために楽天カードに加入しましたが、それ以外のサービスは使ったことがありません。
おっしゃるとおり、いま一つ信頼度が低いからです。
楽天カードはほかの決済には使っていません。
万一スキミングされたりした場合の保証がされないからです。
どうも売上拡大をコスト重視で、利用者視点が欠けている、というのが私の印象です。
楽天モバイルは安くて無料通話付きですし、1年間は使ってみようか思い、LINE モバイルから MNP しました。
楽天 Link アプリには大いに不満がありますが、逆にこれ以上悪くはならずよくなっていくのではないかとの期待はあります。
楽天モバイルが風穴を開ければ携帯電話市場が様変わりすることにつながります。
期待値は実はこの点なのです。
1年間の猶予は与えてもいいかと。
コメントを投稿