スリープ解除は、スリープ解除後のリモートデスクトップ操作やファイル共有などのために行います。
スリープ解除 → VPN で LAN 内へ → リモートデスクトップ操作・ファイル共有
という流れになります。
LAN 内からでなく、外からのルーター越しのスリープ解除に関し、IPv4 での事例は多くあります。
IPv4 over IPv6 方式では、IPv6 での事例ではなく、MAP-E で割当されたポートを使って IPv4 で行うものはあります。
しかし、DS-lite や Xpass では IPv4 でのポートフォワーディングができません。
ウチの場合「en ひかり」の Xpass なので IPv4 での WOL のためには別途 PPPoE 契約するか、固定 IP 契約が必要です。
PPPoE は +550円、固定 IP 契約は +770円かかります。
そこで IPv6 でできないか、ということで事例を探しましたが、ほとんどないようです。
というか、IPv6 による直接に Mac や PC にマジックパケットを送りスリープ解除する事例は下記の海外事例一つのみです(調べた限りでは)。
Wake on Lan over IPv6 with DSLite
本記事では IPv6 によるスリープ解除の方法を記載します。
これにより LAN 内からでなくとも、外から対象の Mac や PC のスリープ解除ができます。
まず、IPv6 ではポートフォワーディングができませんので、マジックパケットを送るには IPv6 フィルターを使います。
IPv6 フィルターで、対象の Mac(または PC)へマジックパケットをルーター越しに通過させるのです。
もちろん Mac(または PC)自体がマジックパケットでスリープ解除を受け入れる設定をしておく必要があります。
下記の2つの設定をします。
① ルーター越しにマジックパケットを通過させる設定
② デバイス(ここではスマホ)側でマジックパケットを送リ出す設定
まずは Mac の IPv6 アドレスを確認します。
[システム設定] → [ネットワーク] → [アクティブなネットワークインタフェース] → [詳細] と進むと次の画面になります。
▢ で囲んだ部分の上の方が IPv6 アドレスです。
再起動で原則として変わりません。
下の方は一時 IPv6 アドレスで再起動で変わります。
IPv6 に関するアドレス生成などは語れば長くなりますので割愛します。
PC(Windows11)の場合は、
[ネットワークとインターネット] → [ネットワークの詳細設定] → [ネットワークアダプターオプションの詳細] → [イーサネット] をダブルクリック → [イーサネットの状態] → [詳細]
で「ネットワーク接続の詳細」が表示され、その中に
・リンクローカル IPv6 アドレス(LAN 内でのみ使える)
・IPv6 アドレス(再起動でアドレスが変わらない)
・一時的な IPv6 アドレス(再起動でアドレスが変わる)
が、あります。
今回使うアドレスは IPv6 アドレス(再起動で変わらない)です。
上64ビットはプリフィックスで、下64ビットはインターフェース識別子といいます。
インターフェース識別子は、かっては EUI-64 に基づくアドレス生成されていましたが、現在はされなくなりました。
EUI-64 は MAC アドレスに基づくアドレス生成ですので、MAC アドレスが容易に判明してしまうことから、現在はランダムな生成にかわっています。
ランダムといっても再起動ではかわりません。
これに対して一時 IPv6 アドレスは再起動で変わります。
ほかにもリンクローカルというアドレスがあります。
IPv6 アドレスに関してはググってみてください。
1️⃣ ルーターの IPv6 フィルター設定
ウチは YAMAHA の RTX830 なので、下記の IPv6 フィルター設定をして、これを WAN → LAN へ通過設定します。
IPv6 フィルター設定は次のようになります。
ipv6 filter 500200 pass <240b:c010::/32> <2001:f71:a0e0:5600:aaaa:bbbb:cccc:dddd>/128 udp * 9
WAN → LAN への通過設定は次のコマンドです。
ipv6 lan2 secure filter in 500200
注1)240b:c010::/32 は楽天モバイルのプリフィックスの先頭 32ビットで
楽天モバイルに割り当てられたものです
一時 IPv6 アドレスなので LTE 再接続の都度変わりますが先頭 32 ビットは
不変です
注2)2001:f71:a0e0:5600: は「en ひかり」の IPv6 プリフィックス
aaaa:bbbb:cccc:dddd は Mac mini M1 のインタフェース識別子です
宛先の Mac(または PC)の IPv6 アドレスになります
IPv6 対応 SIM 搭載のスマホから、"en ひかり” 用のルーター越しに Mac へマジックパケットのみを通す穴あけをしています。
IPv6 フィルターですが、
任意の IPv6 / ポート から Mac mini M1 へのマジックパケット(ポート番号:9)のみを通過させる
というのが設定の内容です。
例えば Aterm ルーターの場合は次の設定をします。
・優先度 :適切な番号
・種別 :通過
・方向 :in
・プロトコル :udp
・送信元IPアドレス:any、またはアドレス指定で
<240b:c010::> / <32>
・送信元ポート番号:any
・宛先IPアドレス :アドレス指定で
<2001:f71:a0e0:5600:aaaa:bbbb:cccc:dddd> / <128>
・宛先ポート番号:<9> - <9>
これによりルーター越しで IPv6 によるマジックパケットの受け入れ設定ができました。
2️⃣ スマホ側の設定
スマホの SIM は IPv6 が使える SIM にし、APN で APNプロトコルを IPv4/IPv6 に設定します。
その上で RemoteBoot WOL というアプリを使います。
Android 用と iPhone 用があります。
アプリをインストールし、開いて 右上の ➕ をタッチします。
欄名に * が付いているのが設定必須項目です |
・Name 欄は適当な名前を設定
・IP or HostName* には IPv6 アドレスを設定
ここでは
<2001:f71:a0e0:5600:aaaa:bbbb:cccc:dddd>
の DDNS 名 <~~~~.i.open.ad.jp> を指定していますが IPv6 アドレス
でも構いません
・MAC Address* には Mac の MAC アドレスを設定します
・Port* は WOL ポートである "9" を設定します
・IP or HostName for Ping は任意設定です
ここでは Mac の IPv4 ローカルアドレス を設定しています
・Note 欄は任意です
以上の設定を終えたら左上の [ ← ] をタッチして下記画面に戻ります。
いま設定した "mac mini" にチェックを入れます。
下の方にある "BOOT selected items" ボタンをタッチすると対象の Mac(または PC)にマジックパケットが流れてスリープが解除されます。
外からルーター超えでスリープ解除できるようになりますし、もちろん LAN 内でもスリープ解除されます。
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